中小企業の管理部門に必要なことって?

中小企業の管理部門の仕事(経理、総務、人事、法務等)の考え方ややりがいについて、中小企業・ベンチャー企業の
プレイングマネージャーとして30年近く働いてきた経験の中での役立つ知識、失敗談なども交えて紹介したいと思います。

決算

決算で、黒字にして利益を上げたい場合はどうすればいいのでしょうか?

3月末決算の法人も多いと思いますので、今回は少し決算のお話を・・・

決算は-
少しでも税金を納めたくなくて節税策をとる会社もある反面、
銀行から融資を受ける必要から、黒字決算できちんと利益を上げたい会社もあります。

男女二人

先日、日経新聞に『赤字申告法人3.3万件』を国税庁が調べたところ、1割以上が実は黒字だったことがわかった。という記事が載っていました。
少し詳しく抜粋しますと・・・・
非上場の中小企業の中にはわざと赤字にして法人税の納税を免れるケースが多いとの指摘がある。(中略)
国税庁が2015年度に赤字だと申告していた法人に対して実地調査を実施した。調査した約3万3千件のうち申告に間違いがあったのは約2万4千件。約8000件で不正がみつかり、その半数は赤字と申告していた黒字法人だった。国税庁は3011億円の申告漏れの所得を把握し、212億円を追徴課税した。企業全体の99%を占めるのは資本金1億円以下の中小企業だ。赤字であれば法人税を納める必要がないため、意図的に赤字を装う事例があるとの指摘は長年ある。(中略)
中小企業ではガバナンスがとれていないとの指摘もある。

上記の記事は、いわゆるわざと赤字にする不正をしているケースというのは、脱税の事ですよね・・・
それは、良くないと思いますが、許される範囲の節税策を取って少しでも税金を安くすることは管理部門の腕の見せ所でもあると思います。

では逆に黒字にしたい会社はどうすればいいのでしょうか?
これも管理部門の腕の見せ所です。
節税対策が書かれたサイトは、たくさんあると思いますので、ここでは利益を上げる決算について考えてみたいと思います。

どんなに利益を上げたくても、粉飾決算にならないように以下の正攻法で見直してみてください。
★安易に実際にない売上を計上したり、在庫額を水増ししたり、では他の科目の数字や過去の数字とのバランスがくずれ、粉飾だとわかるものです。
※参考:粉飾決算とは、どういう目的で行われ、どうやって見抜けばいいのでしょうか?

1.費用(経費)として出金したものを見直します。
①会社案内やパンフレットなど1部あたりの費用を安く上げるために大量に作成していないか?
→広告宣伝費として計上していたものを期末に残った分、資産計上に振り替える
その他も広告宣伝費として計上していたものは、単年度の経費が相当か?複数年で償却するのが妥当か?見直してみる。

②切手や印紙の買いだめ購入
→購入時に通信費で計上しているのなら、期末に残った分を資産計上に振り替えましょう。
※参考:切手や収入印紙、管理しているでしょうか?

③商標登録など取得
→支払手数料で計上したのなら、10年間での償却に変更する。
この時のロゴの作成などデザイン料がかかったなら、同期間に償却にする。

④その他、複数年にわたる手数料を一括で支払っているものがある場合など
→該当年分だけを経費計上にする。(ドメイン料や保証料など)

2.資産の減価償却を見直します。
①20万円未満の資産について、3年で一括償却できますが、耐用年数に基づいて償却することもできます。

②30万円未満の資産について、少額減価償却資産の損金算入の特例(即時償却)を使うこともできますが、通常の償却もできます。
※一括償却は、償却資産税はかかりませんが、即時償却は償却資産税の対象になります。

上記のように必ず、ちゃんと出金したものの処理の仕方を変える、という事であれば、金額のバランスがおかしな崩れ方にならないということです。

★但し、毎年同じ処理をしないといけないので、今年は儲かったら全て経費で落として、今年は赤字になりそうだから資産に振り替える、というのはダメなので注意して下さい。

税務署は、節税・脱税に目を光らせ、逆に銀行は、粉飾などがないかに目を光らせるという感じでしょうか。

一昔前は、税務署は税の取れるところから取るという意味でも黒字申告の企業には、3~4年毎に調査に入るけれど赤字企業の方が間隔があくなんて(?真偽はわかりません)聞いたこともありますが・・・
新聞報道のように不正を見つけようと思うと赤字申告であっても、しっかり調査があると思いますのでちゃんと法令に則った申告で、より自社の求める内容にして頂きたいと思います。


システム会社やデザイン会社の仕掛品を簡単に計上できるExcel表と解説

システム会社やデザイン会社で請け負った仕事が、1か月以内に完成せず、2か月以上受注によっては、半年など長期にわたるものもあると思います。
この時、決算をまたぐ場合は、販売するものの原価を「仕掛品」として計上する必要があります。
システム

システム会社やデザイン会社の販売するものの“原価”って?
人が作業しますので、ほとんどが人件費ということになると思います。
この人件費などをどう考えて、計算して計上するか?方法がいくつかありますが、その中でここでは、決算をまたいだ受注にかかった時間をExcelで管理して計上する方法を説明します。

【システム会社を例にすると】
■仕掛りって何?
1.お客様よりシステム開発の依頼を受けます。
2.仕様を決めて、納期や金額を決めます。
 ※工期は、翌月の1日よりスタートして3か月とします。
(サンプルのExcelは、2月~4月のAプロジェクト、3月末決算の会社)
3.翌月1日になり、エンジニアが、開発をスタートします。
4.エンジニアには、いつ納品の仕事をしていようが、決まった給与が支払われます。
 例え納品前のものの仕事をしていてもです。
   ↓
まだ売り上げになっていない経費を計上して利益を抑えているとみられるわけです。

納品して売上が上がるまでは、この納品のために発生した原価を棚卸資産の“仕掛品”として計上しないといけないという事です。
※システム会社やデザイン会社は、材料費はほとんどないので、主に人件費になります。
※今回は、納品して請求できる段階で一括して売上計上と原価の計上をする場合の説明をします。
※受注してから請求まで1年以上の長期の受注や受注金額が高額な場合は、売上の計上も一括でなく受注の進捗に応じて計上する必要がある場合もあります。

■仕掛品の金額を出す手順
例:Aプロジェクトを例に取ります。
※文末のダウンロードよりサンプルのダウンロードができます。

1.会社は、受注を受けたものを納期までの期間と担当者を把握するための管理表を作成します。
仕掛品計上受注予定表

2.各エンジニアに受注毎にかかる時間を毎月表に記入してもらいます。
 『個人工程表』

仕掛品計上個人工程表

注意点:実際の仕掛品の金額を出すだけの場合は、予定は空欄でも大丈夫です。

3.2で作成した「個人工程表」を「全体工程管理表」に転記します。
3月の表なので、3月の欄に受注名とそれぞれの予定と実質の時間を転記します。

仕掛品計上全体工程管理表

さっきの「個人工程表は」3月のものでしたが、毎月全員分転記していきます。

4.最後に2で作成した「全体工程管理表」から受注毎に抜き出して、「受注別損益一覧」に転記します。(例:Aプロジェクト)
仕掛品計上受注別損益

※記入が必要なところを赤字にしています。(黒字のところは、入力不要です)

5.4で、できた「受注別損益一覧」より、仕掛品の金額を計上します。
下から2番目の「売上原価管理」の1か月目(2月)と2か月目(3月)の原価計を計上してもいいですが・・・
それより外注費は、一旦「前払金」で処理して、実際にその外注を使った売上高を上げる時に費用計上すると月次の試算表(月次決算)でも関係が分かりやすくていいと思います。

【仕訳】
仕掛品 690,625 / 期末仕掛品 690,625 (2月3月人件費計)
前払費用 100,000 / 現預金 100,000(それぞれ支払った、2月末、3月末と2回)
※交通費と印紙代は、少額なので管理できる場合は計上した方がいいですが、煩雑過ぎて管理できない場合は、支払った時に経費計上しても大丈夫です。。

ちなみに「受注予定表」にあったその他のまたいでいた、“PP(株)”“(株)△△”“Cプロジェクト”も同じように「受注別損益一覧」を作成して、仕掛品の金額を出します。
“DDプロジェクト”は、来期から始まるものなので、今期は関係なしということです。

6.2月~4月に決算がなく、期中であれば処理しなくてもいいのですが・・・・
月次決算を導入するのであれば、やはり期中から毎月、月末に計上して月初に戻し入れし売上計上月の期末に資産計上を外す処理をします。

またこの一覧は、受注に対して、誰が何時間かかったら利益額がいくらで利益率いくらの仕事になるのか?を判断する場合にも利用できます。
※4月末で最終的な各自の時間数がでると『予定』の利益額や利益率との比較もできます。

※デザイン会社や設計会社も同様に使えます。
※Excelは、入力不要なところに“保護”をかけていますが、パスワードは設定していませんので、赤字を黒字に戻したり、それぞれの会社に併せて表の修正をしたりは、“シート保護の解除”をしてください。
★仕掛品計上表Excelサンプルダウンロードはこちらから
※記事に出てきている表全てが1つのブックにしてあります。

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